今日のレッスンでのひとコマ。
小学校一年生の生徒さんが取り組んでいるのは、それまでに習っていなかった新しいリズムや指遣いが登場する、所謂「難しい」曲です。
例えて言うならば、この曲をよくおけいこして立派な音で弾けるようになったなら、一つ大きな壁を乗り越える力が育ったと言えるような曲です。
生徒さんは前回のレッスンから一週間その曲のおけいこを頑張り、先週よりも良い音で、しかも曲の最後まで集中して弾くことができました。
そこで、この曲をもっと素敵な音で演奏するポイントをお伝えしていった訳ですが、私との会話の中でその生徒さんがぽつり、
「キラキラ星も難しい曲だったなあ」と一言!
私はハッとしました。
キラキラ星とは、スズキ・メソードで学ぶ子どもたちがまず初めにおけいこする、鈴木鎮一先生の「キラキラ星変奏曲」のことです。
おなじみ「キラキラ星」の有名な主題を用いた5つのリズムからなる変奏曲ですが、チェロを始めたばかりの生徒さんが一番はじめにおけいこする曲としては確かに難しい曲です。
メロディーは親しみやすくやさしいですが、1ヶ月程度で立派に弾けるような曲ではなく、1年以上かけてじっくり学ぶ生徒さんも珍しくありません。
コンチェルトを弾くほどになった生徒さんやそのお母様が「一番はじめにおけいこしたキラキラ星が一番大切だったことが、今になってよく分かります」と仰るように、能力を育てる一番はじめの部分が肝心であるという実感は、能力が育ちインプット、アウトプットのキャパシティが広がってから「そういうことだったのか」とやってくることがあります。
さて、今日の生徒さんに話を戻し…
生徒さんの今日の一言を聞いて、私には彼女の「今弾いている曲」は何の脈絡もなく現れたのではなく、はじめに時間をかけておけいこした「キラキラ星」からちゃんと繋がってここまで来たのだ、ということが彼女自身の実感として込められた一言だったと感じられました。
キラキラ星が簡単に思えるほどよくおけいこを重ね、
その簡単な曲をそれっきりで放っておくのではなく繰り返し、繰り返し復習して立派な音を育てましょう。
そしてもう一度キラキラ星の難しさを思う時、そのタイミングがまた新たなステップアップの時なのだろうと思います!